4県をまたぐ広大な遊水池
渡良瀬遊水地は、栃木県の南端にあり、栃木や群馬や埼玉や茨城の4県をまたいでいます。
面積にすると33k㎡で、総貯水容量は2億㎥となっており日本最大として知られています。
遊水地とは河川堤防の一部を低くして河道から溢れた洪水を一時的に溜めることで、洪水被害を軽減させるためにつくられる池のことです。
このおかげで台風や大雨があっても住宅や農地などの財産、また人の生命が守られています。
1,000年前の渡良瀬川に関しては、桐生川、秋山川と呼ばれる支川を合わせ藤岡地先となっています。
台地に沿って板倉町との境を流れており、現在の江戸川の河道から江戸湾に流れていたようです。
当時政治経済に重点を置いた江戸で関東平野に対しての開発が始まり、利根川も江戸湾に流れていたものが銚子の太平洋に流れるように付け替えられたそうです。
1621年になると渡良瀬川は、利根川最大といわれるほどの支川になっています。
渡良瀬川下流部で起こった洪水被害が原因で、足尾鉱山から渡良瀬川に流れ出たと思われる鉱毒で被害が明らかになりました。
そして、渡良瀬川に関して改修はもちろんのこと、最下流部に対して遊水計画が出されるなど対策がされました。
明治43年に内務省の改修事業が開始され、昭和5年ごろに渡良瀬遊水地が完成しています。
生き物の生活も見れる博物館
緑が豊かで広大な地域ということもあり、渡良瀬遊水地は自然あふれる場所です。
遊水地の面積の中で、2,500haを覆っている植生の半分くらいがヨシ原で、なんと栃木県のすぐれた自然の1つと言われています。
ヨシ原でこのような環境を持つのは珍しく、全国でも最大級の規模とされています。
そのままの低地の自然環境が保たれていることもあり、1度は見て欲しいところです。
多くの野生動物が広大なヨシ原や樹木、池沼に生息していることもあり、たくさんの野生動物たちを見ることができます。
こういった野生動物はかつて全国に生息していましたが、生息環境が減少したことで数が減っていたため、野生動物にとっても大事な居場所です。
これほど自然環境が守られているのは、遊水池としての役割を維持するためにヨシ原や沼の存在があり自然に作られてきたことが考えられます。
渡良瀬遊水地は「生きている自然の博物館」と言っても過言ではありません。
珍しい野鳥や植物がみられる
約260種に及ぶ野鳥が渡良瀬遊水地に生息していて、中でも58種が国指定の絶滅危惧種とされているため貴重な動物が多いです。
一ヵ所の地域にこれだけたくさんの絶滅危惧が集まるのは珍しく、普通の動物園にない楽しみがあります。
冬にはハイイロチュウやノスリなどワシ・タカ類をたくさん見ることができます。
これまでには25種類に及ぶワシやタカなどが確認されており、個体数が多いこともありさまざまな野鳥が楽しめます。
食物連鎖の頂点のいるワシ・タカ類にとっての越冬地としても日本屈指の場所です。
1,700種類もの昆虫がいて、植物も豊富
渡良瀬遊水地では広大な湿地があり、約1,700種類の昆虫がいて、そのうち62種は国指定の絶滅危惧種です。
その内の39種は栃木県に生息しています。
植物は、1,000種確認されており、そのうち約60種類が国で指定されている絶滅危惧種ということもあり、貴重な存在が見られます。
春になると珍しい植物が見れることもあり、例を挙げますとトネハナヤスリやエキサイゼリが存在します。
このような環境を保全するために毎年3月下旬にヨシ原を1日で焼く「ヨシ焼き」をやっています。
ヨシ焼きをすることで害虫を駆除し、ヨシが育てやすくなるとともに、ヨシよりも先に成長する春植物の発芽を促す効果があります。
これほど稀な自然環境を維持できたのは自然の力と人の力があったからこそ。
長年多くの方が守ってきた努力の証なのだと感じることができるでしょう。